プラネタリウム

帰省して思い出したこと。

幼いころ、夜の暗闇は臆病な僕をとても不安にさせた。
ひとりじゃいられない。

子供部屋を与えられた時はとても嬉しかった。昼間の時間は、はしゃぎ回った。
夜になり、寝る前の暗闇は恐怖でしかなかった。
雪の月光を窓から取り込めば、薄灯りは取れるが
冷気も一緒に運んでくる。
あまり寒くては眠れない。暗闇の方を選び障子を閉めた。

その頃の僕の中では、ゆうれい、おばけ、ようかいが同じ所に住んでいた。

僕の生まれた土地では、子供の住む家には
「なまはげ」という奴が大晦日にやってくるらしい。

 

 

ついに、我が家にもなまはげがやって来た。
めちゃくちゃ怖い。僕は泣き叫び両親に助けを求めた。
僕の中のヒーローという親は笑っていた。

どうも助ける気持ちは無いとみた。
幼い僕の中の実在するヒーローは消えた。

_________________________

布団に潜り込んだ僕は、横には何者かが潜んでいるかもしれないという
見えない恐怖と闘う。
とっさの時は蛍光灯のスイッチのひもを引けば解決だと自分に言い聞かせる。
僕の味方はひもだけだ。

物音がすると、すぐにひもを引く。だが、ひもはすぐには探せない。
闇の中、腕を振り回しながらひもを探す。
手がひもをかすめ、振り子になり、難易度はさらに上がる。
しばらく格闘して、ひもをやっとこ握りしめる。

__________________________________

ある時、僕に救世主が現れた。
スイッチのひもの先に付ける、暗闇でも輝く「蛍光ボール」が子供部屋についた。
灯りを消すと、蛍光ボールは黄色に輝き、僕の部屋に満月がやって来た。
ただ、満月というボールは、割とすぐ消えた。 少しがっかりした。

 

____________________________________

去年まで、僕の寝室の蛍光灯のスイッチひもには当然「蛍光ボール」がついていた。
その蛍光ボールは数時間は輝いていた。
蛍光ボールの進化にニコリとする。
その蛍光灯にもついに買い換えの時期が訪れた。

家電量販店にいくと、ひもが1台たりともぶら下がっていない。
全て「リモコン」式となっていた。 リモコンはいやだ。
僕の中の、蛍光灯のスイッチはひもという常識は消えた。

______________________________________

その夜から、さっそく悩みは現れた。
夜中、目が覚める。

まずは暗闇の中リモコンを探す。
手に取ったら、今度はオンのボタンを探す。
こんな、不便な日々が続いた。

______________________________________

久しぶりに救世主がやって来た。
「 高性能蓄光シール スイッチ・リモコン用角型 8時間タイプ」
僕の部屋中のリモコンの主要ボタン全部に貼り付けた。
その夜から、僕の寝室は、夜空になった。
明け方まで輝く8時間タイプ、頼もしい。

とても癒してくれる。僕だけのプラネタリウム。

______________________________